awntan_52のブログ

あんなこと、そんなこと、どうでもいいこと。 気まぐれに書いてます。

盗んだんかい!

f:id:awntan_52:20151028160730j:plain 昔、職場でバイトの女の子が「相談事がある」と社員の私を呼び出した。
その子は大学生で、小柄でとてもかわいく、人に優しく接する姿は周りに好評で、働き始めて3ヶ月たったくらいの新人だった。
私とは職場でしか話すことはなかったので、とても重大なことなのだろうと 行きつけのバーに誘い、半個室の部屋を用意した。彼女は注文をする前に語り始めた。
「今、ストーカーされてるんです」
誰に?
「同じ職場のS君に」
S君?あの、あなたと同い歳のアルバイト君?
「そうなんです。最初は気のせいかなって思っていたんですけど 私の休憩時間にS君も休憩入って一緒にご飯食べることが増えて」 あー、確かに一緒にいるところをよく見てたわ。
「そのときは何の感情もなかったのでいろいろ話していて 趣味とか、学校の話とか、友だちに話すような内容を話してて」 ああ、当たり障りないようなことね。
「で、私、1ヶ月くらい前に一人暮らし始めた話もしたんです」 ああ、今まで実家だったんだっけ。
「私も独り立ちしたいから実家の近くにアパート借りて で、S君にそのアパートの場所を何気なく教えていたんです。
そしたら、昨日の夕方にS君から電話がかかってきて 『近くにいるから部屋に入れてよ』って。
ベランダから見るとアパートの前の信号近くにS君がいて」 ええええええええーーーーー! 何それ、ちょー怖いじゃん! 「そうなんです。パニックになって『今日は帰って!』って電話を着信拒否して」
え?え?それで大丈夫だったの?
「はい。昨日は実家の方に泊まりました」
大変だったね。えー! あのS君が? なんかとっても大人しくて仕事も頑張るいい子なのに。
「私も不思議なんです。で、思い返したんです。 職場でペンやヘアピンがなくなったり、私の女子更衣室のロッカーにお菓子が増えてたり、 無言電話がくるようになったり、あと、干してたパ、パンツがなくなってたり・・・」
パンツ!? パンツも!? ま、まさか、全部・・・S君が・・・? 「だと・・・思いたくないんですが・・・もしかして・・・」 衝撃だった。ストーカーという行為がこんな身近な人の間で起こるなんて。 彼女の物を盗んで、彼女に喜んでもらえるよう女子更衣室に入ってお菓子用意したり ひゃー! 人を好きになるってそんな行動を起こさせるのね! こんな可憐な女の子に対して卑怯なまねをするなんて、恐怖で泣いて眠れなくなりそうじゃない。 だが彼女は泣いてはいなかった。むしろ少し怒っていた。 彼女はか弱いと思っていたのは私の勘違いのようで、本人はS君と戦う気でいるので私に相談したと。 それに彼女はもう1人ある男性社員に相談していて、その人がS君を殴りかねないと。 S君にそんなひどいことはできないので、なんとか彼女自身で解決したいと意気込んでいた。 ストーカーに対しても優しいなんて! 応援するよ、私も手伝うよ! まずは証拠を集めよう! その日は結託の日とし、お酒を飲みながら今後の対応を話し合った。 次の日、これがどうもいい癖なのか悪い癖なのかわからないが、私は1人の話を鵜呑みにできない質で 「友人から聞いた話なんだけど」とか「誰々が言ってたんだけど」とかいう類いの内容は本人に直接聞かないと本質が掴めない単細胞。 何かもぞもぞ胸騒ぎがしてたし、だから直接S君を同じバーに誘って話を聞いちゃった! 「違うんですよ! ストーカーだなんて誤解です!」 え? 何が? 「僕たち、つき合ってたんです! 1ヶ月前くらいから」 ん? つき合って? え? ええええええええーーーーー! 「1ヶ月前に僕から彼女に告白してOKもらったんです。 そしたら彼女、次の日に『一人暮らし始めたから遊びに来て』って言われて 半同棲的な? 彼女の家で一緒にいる的な?」 え? マジで言ってるの? つき合ってたなんて知らないよ! 「だって彼女が『言うな』って言うんですもん」 まあ、職場恋愛は隠した方がいいもんなあ。 「でも1週間ぐらい前から彼女が電話に出なくなってきて メールしたら『ポテトチップス食べたいかロッカーいれといて』って返信きて 無理無理! 女子更衣室に入れないよ! って返信しても『私のこと好きでしょ?』って。 だから女子ロッカーにこっそり入ってお菓子入れたりとかしたんです。 見つからないかヒヤヒヤしたんですよ!」 そ、そんな・・・ 「ヘアピンやペンは彼女が僕にくれたんです。お揃いだから恋人の印だって」 ハハハ、マジですか。 「一昨日は彼女の方から久しぶりに電話がきて『うちにおいで』って言われたから すぐに行ったんです。信号待ちしているときにもうすぐ着くから鍵開けてもらう電話したら 『今日は帰って!』って言われて・・・」 ああ、だから私は胸騒ぎがしたのか。「今日は帰って!」ってセリフ、なんだかおかしかったもんな。 やっぱり真実は情報を集めないとわからないものだな。 「あの、僕、嫌われたんですかね」 うん、まあ、あれだ、きっと、きっとなんだけど、好きな男ができたと思うよ。 君を殴ってしまいそうな男だよ、きっと。 S君はとてもいい子だ。純粋無垢で、頑張りや。 今回が初めての交際だったので、彼女の対応がおかしいかどうかも判断できなかったようだ。 交際自体を口止めされていたので誰にも相談できず、お酒の力を借りつつすべてを吐き出してくれた。 彼は「僕、彼女大好きだったんです」と過去形で表した。 そう、それでいい。 程よく飲んだ帰り道、もうひとつ聞き忘れたことを思い出した。 そうだ、彼女、パンツも盗まれたかもって言ってたけどそれは? 「ああ、それは盗みました」 盗んだんかい!

( °◡°)